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札幌家庭裁判所 昭和39年(家)253号 審判 1964年6月15日

申立人 田宮伸子(仮名)

相手方 田宮実(仮名)

主文

相手方は申立人に対し、昭和三九年六月以降本事件の終了に至るまで一ヵ月金二万円づつ毎月二五日までに申立人方に持参または送金して支払え。

理由

申立人と相手方は昭和二五年二月一五日婚姻の届出をした夫婦であつてその間に一女美子(昭和二六年四月一〇日生)があるが、相手方に女性関係が生じて家を出てしまつたため申立人は現在美子を抱えて相手方と夫婦別居の状態にある。ところで申立人には何等の資産収入がなく上記別居後昭和三九年一月頃までは相手方から一ヵ月二万円(一二月にはボーナスを加えて四万円)程度の支給をうけ辛うじて母子の生活費と美子の学費とを支弁してきたが、同年二月以降相手方は何等特段の事情がないにもかかわらずその支払を停止してしまつたので、やむなく申立人より本件審判の申立をするに至つたのである。

以上の事実によれば、相手方は夫として妻子である申立人および美子を扶養すべき義務あることは当然であり、しかも申立人等母子の生活ならびに教育を保持するためにはその費用は本事件の終局審判をまつまでもなく緊急に支払わるべき必要があるので、当裁判所は相手方が現に北海道庁の職員として一ヵ月最低四万二千円程度の手取り収入を有すること(この点は当然裁判所の照会に対する北海道出納局経理課長の回答によつて明かである。)ならびにその生計事情と申立人母子のさし当りの最低生計支出額とを勘案し、審判前の臨時必要な処分として相手方に対し本事件の終了に至るまでの間毎月二万円づつの支払を命ずることとした。

なお、本事件は件名上は婚姻費用分担請求事件となつているけれども、その実質は別居中の妻から夫に対する自分等母子の生活ならびに教育のための費用の支払を求めるものであつて、夫婦間における扶助の請求ないし子の教育費の請求にほかならないのであるから、かかる事件については家事審判規則第四五条および第九五条第一項に定める事件におけると同様、扶助または扶養をうくべき者の生活費教育費の支払について臨時必要な処分が許されるものと解するのが相当である。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 小石寿夫)

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